賃貸経営を成功に導くために構造選びは非常に重要
本賃貸住宅の構造には、木造、軽量鉄骨造、重量鉄骨造、鉄筋コンクリート造など様々な構造が存在します。
賃貸経営を行うオーナーの経営方針や、物件の所在する地域性によって、どの構造でどのように建設するかが選ばれる訳ですが、新築時の構造選びを誤ってしまうと、経営を始めた後に予想以上に出費が増えてしまうなど、賃貸経営に悪い影響を与えることが起こります。
賃貸経営の場合、どのようなエリアに、どのような建物を建てるかがその後の経営を左右する重要な要素となります。その中でもとりわけ、賃貸住宅をどの構造で建設するかは、建設できる建物の大きさを左右し、その結果、家賃収入の大小が決まってきます。
また、固定資産税や所得税などの税金、火災保険料、維持管理のメンテナンス費用などの出費面も大きく変わってくるので、賃貸経営に大きな影響を与えます。
そこで、今回は、賃貸住宅のオーナーとして最低限知っておいて欲しい各構造のメリット、デメリットについて紹介し、みなさんに理解を深めていただこうと思います。
構造別のメリット・デメリット
【木造】
木造は、柱や壁といった主要な部分の建材に木材を利用した工法です。
古くから日本の建築物に使用されてきた工法です。
今でも、低層の建物においては、一番多く採用されている工法です。
比較的安価で建設できること、設計の自由度が高いこと、一般的な工法であるため多くの建設業者で建築やリフォームができることがメリットです。
一方で、耐火構造にすることや遮音性を高めることが難しい点、高層建築に向かない点などのデメリットがあります。
従って、小規模な賃貸住宅を建設するのに適しています。
【軽量鉄骨造】
軽量鉄骨造は、主要な構造体が鉄骨であり、その鉄骨の太さが6ミリ未満のものをいいます。
主に鉄骨系ハウスメーカーのプレハブ工法(工場で事前に構造体を制作し現場に持ち込む工法)に採用されています。
木造のメリットと重量鉄骨造のメリットを併せ持った工法と言えます。
しかし、高層の建物を建設ことができず世帯数を増やすためには大きな敷地が必要となり、コストアップにつながってしまうというデメリットがあります。
【重量鉄骨造】
重要鉄骨造は、主要な構造体の鉄骨の太さが6ミリ以上のものをいいます。
重量鉄骨造は高層にすることが出来る上、耐火構造にもしやすく、防火の規制の厳しい地域においても高層での建築が可能です。
また、上下階の防音性能も高めやすいので、品質の高い賃貸住宅を建設するうえでは、とても優れた構造と言えます。
しかし、建設コストが割高であり、固定資産税などのコストも割高になるため、比較的家賃が高く取れるエリアでないと賃貸収支が悪くなってしまいます。
【鉄筋コンクリート造】
分譲マンションやタワマンなどで採用されている構造です。
鉄筋を組んだ型枠にコンクリートを流し込んで固めた構造になります。
耐用年数が非常に長く、耐火性能や遮音性能も、他の構造に比べても格段に高くなります。
鉄筋コンクリートの賃貸住宅は一つのブランドと言え、入居者にはとても人気があります。
一方で、鉄筋コンクリート造は建設コストが高いうえに、メンテナンス費用も高額になってしまうデメリットがあります。
地価が高く、高層化が必要なエリアや家賃が高く取れるエリアであれば、鉄筋コンクリート造のメリットを活かすことができますが、家賃を高く取れないエリアに建設すると、収益性の悪い物件になってしまいます。
構造でどれだけ固定資産税が違ってくるか
固定資産税は、1月1日時点での不動産の所有者に毎年課税される税金です。
固定資産税は、各市町村が算出した固定資産税評価額に1.4%(行政によって若干の違いがあります)の税率を掛けて算出されます。
土地の固定資産税評価額は、地価(公示価格)の約7割とされており、集合住宅の建てられている住宅用地であれば一定の軽減措置がとられます。
一方、建物の固定資産税評価額は、その建物を、将来同一のもので建てた場合に必要とされる再建築費を基準に算出されます。
固定資産税評価額は建物が古くなるにしたがって、一定の年数をかけて下がっていきます。最終的には新築時の20%まで下がります。
評価額や20%まで減価する年数は構造によって大きく変わってきます。
評価額が低く、減価のスピードが速ければ、固定資産税の負担は少なく、評価額が高く、減価のスピードが遅ければ、長期にわたり高い固定資産税を負担し続けなければならないことになります。
例えば、新築時の木造の㎡当たり固定資産税評価額が110,000円で、鉄筋コンクリート造が158,000円だったとすると、20年後に木造の評価額は22,000円まで下がっているのに対し、鉄筋コクリート造は87,000円と高い評価額が残ったままとなり、その時点で、4倍の固定資産税を支払う計算になります。
法定耐用年数の違いがどのように影響するか
所得税や法人税を支払う際に、経費として計上できる減価償却費は、実際には支出することなく経費にできるものであり、減価償却費が多ければ多いほど、経費が増え、支払う税金は少なくなります。
その結果、税引き後のキャッシュフローを多く残すことができます。
その減価償却費を算出するうえで、影響をあたえるのがその建物の法定耐用年数です。
法定耐用年数は、構造や用途で細かく年数が決まっています。
法定耐用年数が短ければ短い程、その年に経費にできる減価償却費が増えていきます。
賃貸住宅の構造別の償却年数が以下の通りです。
・木造:22年
・軽量鉄骨造:27年
・重量鉄骨造:34年
・鉄筋コンクリート造:47年
例えば、取得費が1億円の建物の減価償却費として、木造の場合は、年間約455万円経費として落とせるのに対し、鉄筋コンクリート造では約213万円しか経費として落とせないということになります。
つまり、鉄筋コンクリート造の場合、木造に比べ、242万円も経費で落とせる額が少なくなります。
税率が30%だと仮定すると、60万円以上、多くの税金を支払う計算になります。
経営する土地の特性を考えて構造を選択することが重要
以上のように、集合住宅をどの構造で建てるかによって、建てた後の経費が大きく違うことが分かったと思います。
建物の品質面では、非常に優れている鉄骨造や鉄筋コンクリート造ですが、イニシャルコストやランニングコストは高めになります。
一方で、木造は、遮音性を高めたり、高層化することが難しいですが、ランニングコストを抑えて経営することが出来ます。
賃貸経営の最大の目標は、入居者に長く住んでもらい、収益を上げていくことです。
賃貸経営を成功に導くためにもオーナーは、エリア内の構造別の賃料相場を把握し、また、エリア内の特徴(どのような賃貸需要があるか、どのような設備の需要が多いかなど)をしっかりと調査した上で、どの構造で建設するのがベストかを検証していく必要があります。